ローカル5G普及研究会設立趣意書
「ローカル 5G」は、一般事業者が免許制により周波数利用の免許を取得し、5G の最新技術を自己の敷地内で運用する施策であり、課題に対して柔軟に通信基盤を構築することを可能にする点が長所として挙げられる。重厚長大な設備を普遍的に整備するのではなく、必要な場所に必要な条件に合致する、柔軟なカスタム化が可能な基地局を整備するなど、「適材適所」の情報通信インフラを整備することで、消費電力の観点からも環境に優しいエコ社会の実現が可能となる。これは、長期的には多様性を受容するインクルーシブな社会の実現にも繋がる。
例えば、ローカル5Gは、地域社会において、土地再開発における建設機械の自動運用による効率化、農林水産業など1次産業におけるIoT/AIによるリアルタイム・ビッグデータ解析による労働力の転換、高速道路や駐車場などにおける自動協調運転支援、など、地域課題解決と産業振興に有益な技術と想定されている。また、産業面ではサプライチェーンの広域分散化に伴い、情報通信がビジネスに不可欠であるが、現在の情報通信は利用する事業者固有のビジネス展開に適しているとは言い難く、自前でカスタマイズ可能なネットワーク、つまり「情報通信の民主化」への期待が高まっている。
また、現在、世界中で緊急かつ最重要の課題である新型コロナウィルス感染症への対応として、遠隔技術の活用による社会経済活動の継続の観点から最新の情報通信の活用が必須であることは明白である。ローカル5Gを含む情報通信の進化は、感染終息後の世界を見据えた戦略的対応が必要である。この観点からも、人間のあらゆる社会活動を安心安全な情報通信により革命的に進化させるデジタル革命(DX)を牽引する技術、そして、産官学でSociety5.0の本格的な実現を支える重要技術としてローカル5Gの普及が重要である。
しかし、ローカル 5G の施策が本来の目的通りに普及し、一般事業者、地方自治体、大学などが主体的に導入可能とするためには、主に環境整備(プラットフォーム整備)における課題が多く残されている。例えば、(1) 機器の低価格化・オープン化・柔軟性、(2) 運用の容易化 (3) 限定されたカバレッジの補完、(4) セキュリティ高度化、(5)有線網を含めた展開容易性 などが喫緊の課題として挙げられる。
ローカル 5G 普及研究会は、このような環境整備の課題を解決するため、様々なステークホルダーが叡智を結集し、実際のものづくりとパートナー形成、および、ユースケースの探求を通じてプラットフォームの成功モデルケースを確立することを目的とする。例えば、(1) ソフトウェア化・設備共用の推進 (2) AI・機械学習の利活用による運用自動化 (3) ローカル5Gと公衆5G間のローミングや設備共用 (4) 独自のセキュリティ強化、(5) 展開性の高いシステム統合開発など、 低コストでありながらもカスタマイズ可能かつ公衆 5G と遜色ないレベルのローカル 5G インフラの早期実現と普及を図る。また、通信事業者が推進する公衆 5G とローカル 5G の適材適所の利活用方法を探求する。
これらの環境整備には、BAの精神でもある産官学の枠を超えたステークホルダーから異なる視点での課題解決を実施する必要があり、ローカル5G普及研究会でのオープンな議論を通じ、異業種コラボレーションの場、新ビジネスに踏み出すきっかけの場、共同で競争資金等のリソース獲得をする場として活用する。
2020 年 3 月 4 日
発起人代表 中尾彰宏
「ローカル5G 普及研究会」発起人一覧 | ||
氏名 | 所属・役職 | |
発起人代表 | 中尾彰宏 | 東京大学 大学大学院情報学環 教授 |
発起人 | 森川博之 | 東京大学 大学院工学系研究科 教授 |
同 | 門脇直人 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 理事 |
同 | 井上友二 | のうえノバ株式会社 代表取締役社長 |
同 | 岩浪剛太 | 株式会社インフォシティ 代表取締役 |
同 | 関口和一 | 株式会社 MM 総研 代表取締役所長 |
同 | 藤原 洋 | 株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長 CEO |
同 | 井内秀則 | 東京大学 特任研究員 |
同 | 青山友紀 | NPO 法人ブロードバンド・アソシエーション 理事長 |
同 | 飯野嘉郎 | NPO 法人ブロードバンド・アソシエーション 理事・事務局長 |